Lecturer Review 2017 -猪熊純-

 

 

 

 

 

 

 

 

建築が与える影響とは?

その建築で何がどう変わるのか。その建築は影響力を持つのか。猪熊純さんは建築が持つ力の使い方が新しい。そう感じた。建築はそんなに社会のモノゴトは変えられない。猪熊さんはそう言った。しかし猪熊さんの建築には確かな影響力を感じた。建築が生まれた場所から街が変わり始めているように感じた。猪熊さんの建築は平面図と断面図が生き生きしていて楽しそうで人と人の繋がりがナチュラルに感じられる。LT城西はまさにそんなシェアハウスだった。平面図、断面図はワクワクしていて「居場所」の雰囲気が今までのものとはまるで違う。立面図をずっと見ていられて惚れるというよりかは平面図、断面図を見て今すぐに住みたいと思う。そういう建築。さらにオーナーメリットと入居者メリットまでも十分だった。オーナーにとってのメリットは施工費が低コストであること。それに加えて家賃収入も十二分にあること。また、一般に1人暮らしは6畳と言われる中で入居者1人あたり7.5畳の床面積。そして自由なコミュニティ形成が可能な建築物であるということが入居者のメリットである。どちらにとっても魅力的である。

人と人との境界線が見えない。

猪熊さんの建築には境界線が見つからない。ただ、見えないだけで存在する。隠れる場所、守るための場所はしっかり用意されている。絶妙に隠されている。ここにさらにつながりを密にする何かがある。距離感の建築でもあるのだろうか。

社会が変わると建築も変わる。

縮小する世の中に対してはコンビニとカフェと郵便局が一緒になったものも必要かもしれない。少子高齢化に対しては福祉や子育て施設がニーズになる。平均世帯人数が3人を切った今の住まいにも新しい形が必要である。今に必要な建築とは?今?シェア空間というのは今この瞬間にもニーズが変わり続ける現代の建築に対する一つのアンサーだと思う。入居者9人とともに内装を決めた坂の上テラス。この建築プロセスは今後の建築家のあり方まで変わりそうな提案だった。

ただ建築で社会を変えるのは難しい。

上にも記した通り猪熊さんは建築でモノゴトは変えられないと言った。今はニーズが変わり続け、ソフト面の寿命は短い。建築そのものの寿命もある。だから社会は変えられないと。そのため猪熊さんは冗長性を作ることも大切だという。では次の世代に必要な建築とは?未来の建築家のあるべき姿とは?

単一機能の複合。

近代は外部化された単機能達が溢れていて、それらを複合するという考え方で建築に対するプロセスが変わる。そもそも住宅が担ってきた機能を単一化して生まれたのがカフェ、レストラン、オフィス…である。基本に戻ってそれらを複合しようとするとシェア空間や、新しい施設が生まれてくる。次に必要となる建築はどんなものなのだろうか?原点、基本を振り返ることが大切な気がしてくる。同時に未来に必要なものも考える。次の時代のための建築を考えるいい刺激となった。

(北海道組9期 北海道職業能力開発大学校 四ツ屋)